2019/05/09
先日、里帰りから戻って来てくれたお嫁さんを迎えに、車で新大阪まで行った時の事。 新御堂を飛ばしながら降りて、新大阪駅の2階出迎え道路まで来たものの、車を止めるスペースがなく、また時間も30分ぐらいあったので、「まぁいいか。」と1階の駐車場に止めようとしました。 でも1階駐車場も満車で止める場所がありません。「まぁいいか。」と、駐車場が空くまで周りをぐるぐるしようと、駅前の2つに分岐している道路を右に曲がってしまいました。それがなんと客待ちタクシー専用の通路だったのです。。 Uターンできるスペースがほとんどなく、唯一広くなっている場所でUターンすべく切り返そうとすると、後からきたタクシーの運転手さんが窓から腕を出して、「そのまま前に進まんかい!」といわんばかりに握りこぶしを天高く振り上げています。 恐る恐るもう一度バックミラーで確認してみましたが、目からビームが出そうなぐらいの目力です。怖くなった私は、そのまま狭い道なりにすすんで、2階に上がって来てしまいました。そのときに私が見たものは。。 (新大阪駅のタクシー)
客を乗せるために並んでいるタクシーの群れ。。ざっと100台近くありました。自分の置かれた立場を一瞬忘れ、その壮大な光景に息をのみました。。これだけのタクシーが、テーマパークの人気アトラクション前のように、規則正しく、じわじわ進んで行って端に着たらUターン、そしてまたじわじわ進んで行っては。。と、氷河のごとくゆっくりと進んでいます。
でもすぐにわれに返り、途方に暮れてしまいました。しかも周りのタクシーの運転手さんはみんな僕の方を見ています。なにやらいろいろ叫んでいるようです。
そういえば、規制緩和と不況のあおりを受け、タクシー業界は非常に大変だと聞きます。。少ない客の取り合いが激しいと聞きます。。 厳しい状況におかれた運転手さんたちは大きなストレス下にあると聞きます。。そんな中に紛れこんだ、子羊の運転する車。。 僕はいったいどうなってしまうのでしょうか?
正直生きた心地がせず、窓を閉め切ったまま、前後左右の視線を無視しながら流れに任せていました。でもそんな僕の抵抗にもすぐに終止符が打たれます。なんと、一番最初から激しく叫んでいた後ろのタクシーの運転手さんが、ついに車を降りて 私側の窓を激しく叩いたのです。。
ところが観念して窓を開けた私に、顔を30cmぐらいまで近づけてきたのは、怖い顔をした、とてもやさしく気さくなおじさんでした。
「おい兄ちゃん、この先の突き当たりに小さな鉄製の柵があるから、そこで車を降りて、柵をどけたら外に出れるから、それまで辛抱しぃや!」
その怖そうなおじさんの顔が、なぜか涙でにじんで見えました。
その後、窓を開けたままにしていると、すれ違うタクシーから、「大変やなぁ。」「出る方法聞いたか?」と次々とやさしい声がかけられます。
結局30分ぐらいで外に出れたのですが、久しぶりに人の優しさを肌身で感じた気がしました。
人は苦しい環境におかれると、お互いを助け合おうとするのかもしれません。 そういえば、船乗り時代、休暇中にずいぶんいろんな国に行きましたが、先進国の人たちは、知らない人に対して冷たくクールな印象を受けましたが、貧しい国の人たちは、お互い助け合いながら生きていくために、逆にうっとおしくなるぐらいに親切で人と人とのつながりが強い気がしました。
結婚して、自宅と職場の往復を繰り返しているうちに忘れかけていた、人と人との関わりを思い出した気がします。 当院にもさまざまな病気を抱え、そしてさまざまな生活の悩みを抱えた患者さんが来られます。そういう方々に、心から頼りにされるような人間的な暖かさをもっと磨かなくてはと改めて思いました。